- 研究トピックス
発現が難しいたんぱく質を大量生産する新技術を開発 ‐植物の胚を形成するメカニズムの解明に貢献-
2014年4月23日
本学生物資源工学研究所 森 正之 准教授と北陸先端科学技術大学院大学 大木 進野 教授らは、英国ワーリック大学 グティエレスマルコス教授らの研究チームと共に、顕花植物における重複受精の際に初期胚が形成されるメカニズムの一端を解明しました。
分子生物学や生化学、構造生物学などの研究では、一般的に、遺伝子組み換え大腸菌や酵母などを利用して試料たんぱく質を調製します。しかし、リン酸化や糖鎖付加などの翻訳後修飾がされたり、ジスルフィド結合を持つたんぱく質は、従来法では生産が困難でした。また、たんぱく質の構造解析をNMR法で行うには、安定同位体と呼ばれる特殊な原子で試料を標識する必要があります。
森准教授と大木教授らが開発した新しいたんぱく質生産技術では、たんぱく質の設計図となる遺伝子を、大腸菌や酵母ではなくタバコBY-2細胞に取り込ませて試料となるたんぱく質を発現させます。BY-2は、液体培地で大量に培養可能で光合成能力がない日本発の植物細胞です。本開発成果を用いると、従来法では生産が困難だったたんぱく質を、生理活性を保ったまま大量に生産することが可能です。また、たんぱく質に含まれる特定の原子を各種の安定同位体で標識することができます。
今回、英国チームが世界で初めて同定した顕花植物の初期胚発生に重要な因子である新規ペプチドESFについて、タバコBY-2細胞を使うことにより試料調製とNMRによる構造解析に成功し、ペプチドの生理活性の発現メカニズムを解明しました。
本研究成果は、2014年4月11日(米国時間)に米国科学誌「Science」で公表されました。
JST http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140411-2/index.html
Science http://www.sciencemag.org/content/344/6180/168.abstract