生物資源工学研究所
遺伝子機能学研究室


遺伝子機能学研究室では、植物が持つ多様な遺伝子の機能を利用して、貴重な天然化合物や植物タンパク質を、効率的に植物等に作らせるための先端バイオテクノロジー研究を行っています。
産業上有用な天然化合物、たとえば、カロテノイド色素、セスキテルペン、高度不飽和脂肪酸等を合成する新規遺伝子を単離し、機能解析を行います。そして、解明された有用遺伝子を植物または大腸菌に導入し適切に働かせます。植物宿主としては、レタス、ゼニゴケ、タバコ培養細胞、ナタネ(菜種)、アマ(亜麻)といった多様な植物種を扱う技術があります。このように、遺伝子機能学をテーマに、私たち人間の健康と暮らしに貢献する新技術や新素材の開発をリードしており、化学会社や製薬会社からも注目されています。あわせて、バイオテクノロジーに関する一流の研究者や技術者の育成を目指しています。
担当教員
Close UP!! 植物が秘める無限の可能性を探り植物の魅力を引き出す

植物が持つ無限の可能性の解明と利用に、遺伝子レベルから取り組んでいるのが遺伝子機能学研究室です。たとえば、コケ植物のゼニゴケに医薬品となるエイコサノイドを作らせる研究があります。そのために、ゼニゴケ中の有用な代謝系遺伝子を探したり、他生物の遺伝子を改良してゼニゴケに導入する研究を行っています。また、レタスやナタネなどの作物に、強力な抗酸化色素であるアスタキサンチンを作らせる研究があります。蟹、海老、鯛だけでなくフラミンゴや朱鷺(トキ)の赤色の本体であるこの色素を植物に作らせることにより、ヒトの健康だけでなく植物それ自身にも有用な効果をもたらすかもしれません。
このほかにも、劣悪環境に強いキヌアの開発やウィルスベクターを用いて遺伝子機能学をテーマに有用タンパク質を高生産する植物生産システムの構築など、いくつかの先端バイオテクノロジー研究を進めています。
研究の原点は、「どうして、こうなんだろう、こうなるんだろう?」という素朴な疑問を感じ、それを自ら探究したいという強い気持ちです。膨大な種類があり、医療や環境など多岐にわたる分野で活用されてきた植物。まだまだ多くの謎と可能性が残る、この自然からの贈り物をいかに解明し活用していくかが、20世紀からの石油文明に代わる、21世紀の循環型社会構築の成否の鍵を握るといってよいでしょう。